夕虹のうた

  
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  星だらけの夜空のもとにまつ白い秋の蝶ひとつ舞ひ死なむとす



  真夜なかにしばしば我がゐなくなり窓の外なる星とあそびき



  うなだれた花花のそば帰るとき三千世界にただわれひとり



  川魚のむねをひらいてゐるときに夕虹あがる夕虹のうた



  いちまいの魚を透かして見る海は青いだけなる春のまさかり



  億万の春のはなばな食べつくし死にたる奴はわれかも知れぬ



  野にかへり春億万の花のなかに探したづぬるわが母はなし



   うまれた日は野も山も深い霞にて母のすがたが見られなかった



  あかときの空にまつ白に舞ふ鳩のほがらかさに負けてしまつた





               ーーー   前川佐美雄『白鳳』


  …宇宙規模の広さに、ゾッとする
  解説は要らない。情景を浮かべるだけでキューっとなる。
 おぅカッコイイねなかなかやるね、とかではなく「負けてしまつた」感が強い。
  
  無力です