『ソロモンの偽証』宮部みゆき。新潮社。2012年。
分厚いですよ。700ページ超えのハードカバー本、三冊ですよ。
今は二冊めの200ページあたり。
中学生が事件にウンザリしたので頑張る話。(今のところ)
学校内のイジメやカースト制によって引き起こされた(のかもしれない)自殺、ひきこもり、傷害事件、を中学生の目線で描いてみる試み(まだ読了してないので…すいません。憶測です)
複数の目線で描くことによって、他者が他者をどう捉えているのか、感じ方や認識の差を鮮やかに見せてくれている。
中学生ばかりではなく、様々な職種の大人が絡んでくる。先生たち、警察、保護者たち、マスコミ、弁護士、自営業、サラリーマン、探偵、近隣住民、、、。大人に囲まれた中学生たちは、こんなに不自由で、こんなに保護され大事にされているのだなぁ、と思う。
(成人として、自由である事の責任なんかも感じちゃいますね^_^)
この物語の流れ、さすが宮部みゆき。
主人公らしい女の子が怯んだり不安になっても、立ち直っていきます。
この過程こそが大事なのです。
一人一人の心の闇も鮮やかで、推理小説というよりは社会小説。現代の悪癖、犯罪の始まり、子供の邪悪さ、大人の無責任、関係の希薄さ、が体感できます。
一人一人がどう相手に働きかけ、どう相手に応えるか。相手は何を期待し、何を与えるか。
言葉の後ろにある気持ちは何か?
どういう結果を望み、そのためにできる事は何か?
相手のために何ができるか?
主人公らしい女の子は自分のやるべきことを見つけ、真っ直ぐに歩き出したのだけど。なかなか前途多難です。
彼女たちは、イジメの有る無し、自殺の原因追求、問題追及、内容の真偽に重きを置いていない。
犯人探しや勝ち負けではない。
答えを探している。
正答を探しているのではなく、自分たちで出す自分たちだけの答えを探している。
皆の話を聞いて、皆で考えようとしている。
…読んでて、登場人物の立場、論の進め方、が面白いです。
理解しあった許しあった、と思ったら押さえ込もうとしたりして。
人は一人でいられない。必ず社会は形成される。
群れ方にも色々とあって、良い群れ方・悪い群れ方があるのだなと痛感します。
完璧に形成され、成熟した社会でも、「正答」を強要するとたちまち腐る。
流されてもダメ、都合を合わせるのもダメ、待っていてもダメ。…「正答」でもダメ!!
結末より経過が大事な本。
「正答」探しに忙しい人は多いから、こういう本はガンガン売れてほしい。
そんな事を読みながら考えている。