彼女の名は、亜希子。

  友達ではない。だけど、限りなく友達のような人である。


  三才年上の女性である。六年ほど勤めた花屋の会社の先輩である。彼女が店長をしていた店で修行を積んで、私は違う店で店長になった。彼女の店で技術を学び、自分の店で実践してみる。わからないことは彼女に電話できいた。彼女がつかまらない時は本店や社長に電話してきいた。

 技術だけではなく、人間関係の相談もした。配達員や従業員や、違う業者への対応や、諸々。

 彼女自身からガンガン怒られることはあったけど、反省したらケロリとしていた。客商売なので、落ち込んでる暇もない。彼女からすれば、私は後輩として可愛かったのだと思っている(自分で言うのも何だが)私が失敗しても、上手に庇ってくれた。

 私の失敗のパターンを彼女は理解していた。クセともいうが。私だったらこうするだろうと予測できる。具体的に言うと、イケイケなのだった。売られたケンカは買う(自分からはケンカは売らない)。仕入れすぎる。地味な小花系ではなく、派手で大きいものを選ぶ。デリケートで管理しずらいものよりも、強健なものを選ぶ。売れ筋はドンと注文する。発注のことで配達員ともめたり、 他の業者ともめたりすることはあった。


 一生懸命やって失敗するのなら、助言してくれるのだ。


 仕事ではかなり尊敬している。的確だし、判断スピードも早いし、人の使い方も知っている。器用で要領がいい。準備もしっかりやる。年ごと、季節ごとにデータも残している。流行もみる。予算をあまり使わずに、店づくりでできることを考える。近くで一緒に働くのが気持ちよいと思うほど、気持ちよく働いた。


 仕事ではかなり尊敬している。が、プライベートではなかなか理解できないことが多かった。呑みに行くし、泊まらせてもらうし、遊びに行ったりもするけど…、友達ではない。


 報告はするけど、相談はしない。

 ムカつくことも多かった。セクハラなんじゃないかとも思った。腹立ちまぎれに、仕事を辞めると言ったこともある。彼女も私にムカつくことはあっただろう。


 まぁ、でも。


 仕事を辞めた今でも、時々電話する。(またうちで働きなよ。いつでも待っているから)とも言ってくれる。有難いことだ