ひみつの花園

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 『ウォーターボーイズ』や『スウィングガールズ』で有名な矢口監督の、『ひみつの花園』という映画が好きである。

 

 西田尚美さんの顔がいい。もちろん表情とか演技なのだと思うけど、好感がもてる良いお顔をしてらっしゃる。

 終始たんたんと目的のために努力している。お金を使い、時間を使い、それをごく当たり前のこととして気負った空気は全くない。彼女の周りの者はそんな彼女の行動について行けず振り回されるという、矢口監督の味がたっぷりつまったB級コメディ映画なのだが、見ていて気持ちがいい。

 ほけーっとしている女の子が、ある情熱を持ってずんずん歩きだす。他人の目なんか気にせずに、油断しきった顔で、先を見つめている。誰かに何かしてもらおうなんて考えないで、(妹は利用しようとしていた^_^)自分でやる。子どものような顔である。 

 彼女の努力は実るし、チャンスもめぐってくる。諦めない強さがある。彼女の笑顔のシーンは少ないが、それは道の途中だからだと思う。一歩づつ達成していく悦びはあっても、全開の笑顔ではない。その顔もまた良いのだ。

 完全に自足している顔、なんだと思う。

 誰かに見せるための顔ではない。子どものような顔と言ってしまってはいけない。ラストシーンの顔は、かなりさっぱりした爽快な顔である。


 映画としてのファンタジーは多分にあるけれど、これだから映画って良いのだと思う。(コーエン兄弟の映画にある俯瞰とか、そういう種類のファンタジー)

 リアルとは逆のベクトルにあるファンタジー。

 非日常的であったり、弱さや苦労を見せないことが、良質なファンタジーなのではない。日常がうまく描ければ非日常的な事件がその分ますます映えるのだし、弱さは裏をかえせば優しさであり、苦労とは努力のことなのだから、ファンタジーだってリアリティの延長なのです。

 そんなにうまいことないよねという場面はファンタジーだけれど、本能として「見てみたい」場面なのです。映画でなら体現できる。


 女優なら体現できる。

 自足して、満足して、さらにまた進もうとする人を体現できる。

 非日常的で優しくて努力する人を体現できる。


 絵本のようにファンタジックな映画です。