悶えながら、本を閉じる。

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 江戸風俗研究家として知られる、杉浦日向子先生のファンである。

 漫画は全部揃えている。

 粋という言葉がピッタリの、かっこいい女性である。

 彼女がいなければ、これほど北斎や怪談話に親しみを持たなかっただろう。いつ読んでも新鮮な気持ちでページを繰ることができる。エピソードが短めなのも良いし、一枚絵が多いのも潔くて良い。とにかく漫画は繰り返し繰り返し読んでいる。


 以前に『ごくらくちんみ』という本を買った。酒の肴と、それにまつわる話、エッセイではなくショートショートだったように記憶している。聞いたことがないような食べ物ばかりだったような…?でも酒の肴って、よくわからないものが多い。「たたみいわし、たたみいわし。憶えておいて、いつかメニューで見つけたら注文してみよう!」と、好奇心もそそられて面白く読んだ。その後、友達に「面白いよ」と言って本をあげてしまった。(その当時、良い本は巡るべきだと思っていた。よっぽど手元に置きたい本でなければ、欲しいという人に本をあげていた)


 このたび、新潮社の『杉浦日向子の食・道・楽』という本を読んでいる。こちらは食のエッセイ。だけどこれはかなり悶える!すっごく美味しそう!ヨダレが出る!うめきながらページを繰ってしまった…。詩のようでもある。ウットリしちゃう。酒器の写真付き。麗しいこと。

 加速しながら読んでふと、イヤ、これは勿体無い、ちょっとづつ読もう…などと貧乏たらしく本を閉じたりして。この本は贅沢だ…、濃い酒のようだ…、刺激が強すぎる。


 食欲って素晴らしい。


 漫画ばかり読んでたけど、調べてみたら漫画以外の出版物がたくさんある。かなりマルチな人だったんだなぁ。ますます尊敬してしまう。


 もう亡くなられてるので新しい漫画は読めないけれど、まだ読むものが残されているの知ってホクホクと嬉しくなった昨日の夜でした。