天体観測

 このあたりは星が綺麗なので、そろそろ星の名前をおぼえようと思っている。


 昔から固有名詞が好きで。

 人の名前、地名、料理の名前、草花の名前、技の名前、もういろいろ。ペットにどんな名前をつけるかで、その人がどんな人か察する。インドネシアではバナナの成長段階によって、バナナの名前が6通りあるときいた。いいですよね。想い入れの分だけ名前があって、使いわけて。

  名は体を表す、です。


 アレとかソレではなくて、名前を呼んであげよう。


 夜空の星にも、発見されたものは全て、名前がついている。

 記号のようなもの、古代の女神の名前が冠されているもの、有名な星座の図形を表すもの。

 どれがどれやらわからないけど、スマホのアプリでかざしたら全部出るのがある。軌道や等級や伝説や座標が。これはモノグサの私でもできそうだ。ドラえもんに助けてもらったのび太の気分で、夜空を見上げる。ふむふむ。


 中学生の時に一緒に天体観測した女の子は、遊佐未森をよく唄っていたな(カラオケとかじゃなくて、授業の合間に)聖子という名前だった。鼻筋のとおった、色白な子、髪もうす茶色だった。細くて高い唄声が、とてもロマンチックだと感じたものだ。ロマンチックなことが好きだった。

  冬で寒くて、立ち入り禁止の屋上で、星なんか出てなくて、もう帰りたいと思っていたけど「帰ろう」って言い出せなかった。オリオン座とカシオペア座を、アレとアレだと、相談して決めた。同じ星を指していたんだ、と信じたい。


 今は違う土地にいて、便利なオモチャを持っている。

 

 「別の国は遠いけど、宇宙は鼻の先」と詩人は言った。


 星にも歴史はあって名前がある。

 遠くを見つめる。


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