夕暮れに庭に水をまいていると、「こんにちは」と挨拶をされる。
健康のための散歩が日課のおじさん。彼は大の猫好きなのだ。うちには二匹の猫がいて、庭で遊ぶ猫たちがいないかと、首を伸ばす。コンクリのところでゴロンとしていたらわかりやすいけれど、草陰にいることもあるし、花壇の中にいることもあるので、その姿を見ようと少し首を伸ばす。
私は挨拶しながら「猫どこにいたっけ?確か裏で寝てたな…」と思いつつ、裏の方に向かって歩いていくおじさんの背中を見守る。
…見つけたようだ。
歩みが遅くなり、一点を見つめ頬を緩めている。にたっと笑っている。
チョッチョッと呼んでいる。
好きなものを眺める視線って、良い。
カップルなんかでも、女の子をすごく好きそうに見ている男の子の視線が好き。
大抵そういう時って、女の子は余所を見ていたり気にしたりしてて、無防備なんだ。女の子諸君は知らないだろう。鏡の前で笑顔の練習をたくさんしていても、その笑顔よりも、無防備な女の子の仕草に男の子の視線が集まっていることを。女の子が顔をあげた途端に、男の子はぱっと余所を向いてしまう。女の子は男の子に見られていたことに気づかないのだ。
すごく優しい目でアナタを見てんだよ。
男の子も、自分がそんなに優しい目をすることを知らないんだろうな。