『ぴんぽんぱん ふたり話』瀬戸内寂聴、美輪明宏、の対談集を読んだ。
戦前、戦中、戦後を知っている(!)二人は、叩き上げの怖いもの知らず。しかもスピリチュアルな世界とも親しい。飛躍が素晴らしい。気持ちいいくらい飛んでくれる。お互いがお互いに触発されて飛ぶので、どんどん飛ぶ。
話の中心が、意外にも、三島由紀夫。メインテーマです。(もっとスピリチュアルな方面かと思いきや……、お二人とも三島由紀夫について語りたかったのだと思います。美輪さんなんか特に沈黙を通していたから。相手が瀬戸内さんだったから語れたのだと思います)
読めば読むほど、三島由紀夫が可愛い。
多作で。文学的なものも大衆的なものも、戯曲も、散文も批評も、短編も長編もあるので。俳優だったし。ノーベル賞候補だったし。
( 私自身、何を読んだか覚えていない、申し訳ない、印象的だったのが『美徳のよろめき』『愛の渇き』内容は細かくは忘れてしまったけれど、メロメロなメロドラマだったこと。よろめきそうだったこと。あんなマッチョな人が、こんなものを書くのか!という驚き。お母様の影響でしょうね)
自分で「三島由紀夫像」をつくりあげ、三島由紀夫を演じていた部分もあるだろうし。
コンプレックスもたくさんあっただろうし。
皆が三島由紀夫を語りたがる。
オブジェとしての、三島由紀夫。
彼の自殺はあまりにセンセーショナルで、象徴的であった。
村上春樹も初期の作品で「三島由紀夫」の自殺を取り上げた。大事件であった。その時代の空気を変えるような、大事件であった。
けれど二人は。
天才で努力家だったことよりも、馬鹿みたいに純粋だったねと語る。
思い出話なのだ。
長いお通夜で、親族が故人の思い出話をして、笑うような。
あの時あんなこと言ったのよ、とか、だから私言ってやったの、と続いていくおしゃべり。
一般のイメージを全部無にするような、舞台裏の話。
真っ青になって怒ったことや、緊張で震えていたことや、夜中の電話や、本当はホモじゃないことや、…いろいろ。
多面体のオブジェではなく、親しみのわく人間三島由紀夫が浮かびあがった。
馬鹿みたいに純粋な三島が、何故自衛隊に乱入して腹切りをしたのか。
最後の演説は、マイクの調子が悪く聞こえづらく、しかも自衛隊の野次にかき消され、静かに聴けと怒鳴りながらであった。
声も、想いも届かず。
エキセントリックでマッチョで右翼な人ではない。
賢く、美意識が高く、純粋だった。そして私たちと同じように悩んだり考えたりした。やり方を貫いてしまった。
彼の葬式の写真で。歯を食いしばるような顔の川端康成が印象的だった。
本当に、悔しかったのだろうなぁ。
篠山紀信が三島邸の写真集を出していて。それを見ていても、なんだか悔しい。
彼の望む日本は無い。
憂国。
美しい日本のために、彼の遺した言葉を読もうと思った。