少年の罪科。

  『午後の曳航』三島由紀夫、新潮文庫。を読んだ。


  33歳の母親は、13歳の息子と二人暮らし。父親は息子が8歳の頃に亡くなった。船乗りの竜二と母親は、恋仲になる。……そういう話だ。

  母親と竜二だけなら、メロメロなメロドラマなのだけど、息子の視点が冷たくそれを否定する。

  息子は、短編『詩を書く少年』の主人公の少年に似ている。賢く、純粋で、冷徹。子供らしさを装うところなど、怖い。

  (船乗りの竜二など、カッコつけた一匹狼だけど、小説の中では平凡な好青年のように見える)

  少年とその仲間たちが、この物語の主人公。恐るべき子供たち


  恐るべき子供たちは、決して遊んではいない。怠惰ではない。

  大人になることを、非常に怖れている。腐った大人にならないために訓練している。


  だから〔子供が大人になったような竜二〕を許せなかったのだろうなぁ。腐った大人なら、捨ておけるのに。


  子供だった頃の自分もやはり、今よりもっと潔癖だった(と思う)

  子供だから残忍なこともしたし、認められたいと願っていたし、迷うことも緊張することもあった。

  距離が計れなかったのだと思う。

  何もかも完璧に同等に接したかったのだと思う。力の抜き方を知らずに立ち向かっていく、避けて通れる道でも真っ直ぐに進む、そういう潔癖さ。やり方の問題ではなく、目が見え過ぎていて、処理できないのかも。

  そしてきっと、自分自身も認めることができず、許せないのだ。行動して証明したい、自分自身を許したい。


  自分では正しいと思うやり方でも、子供から見たら十分に腐っている(こともある)

  

  最後の最後で。本当に竜二に同情した。

  

  こういう終わり方って、かなり悲しい。


  タイトル『午後の曳航』っていうのもカッコイイと思います^_^


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