野性。

 
 ここは山口県。

  猿はよく見かけます。場所によっては、ヒトより多かったりして。集団で移動します。ヒトが収穫しきれない栗と柿で味を覚えた猿は、毎年同じ木にやってきます。田畑は根こそぎやられたりします。玄関横のプランターのミニトマトだって獲ります。種を取るために熟れ熟れにしているヘチマだって獲ります。カボチャを両脇に抱えてヒョコヒョコと歩いてます(後ろ姿は正に子供)ガレージに干している玉ねぎの紐を千切って全て落とし、憎たらしいことに一口づつ齧って食べ散らかします。芋も大根も引っこ抜き、一口づつ齧って食べ散らかします。(とにかく何でも食べ散らかします)
  器用なのでビニールハウスに侵入したり、隠してある籠を引っ張りだしたりして迷惑。近所の人たちは賢さに感心し、呆れ、「自分らで作ればいいのに!」と怒っています。ホントね。


  猪も柵をくぐって田畑に侵入し、荒らします。
  山に入ると猪の掘り起こした跡がたくさんあります。ヤマノイモとかキノコを食べてるんですね、、、グルメ。
  猪は車に体当たりしてくるからいけない。凹みます。「対物事故」になるので、もしも私の車に当たってきたら修理費出ないんです、どうか当たりませんように。

  まぁ、猿も猪もどっちも嫌だけれど…、
  熊よりはいい。熊はねぇ。ちょっと勘弁してもらいたい。

  私は熊を実際には見たことないけれど、見たという話は聞きます。熊と戦って勝った人とか、ニュースになる(当たり前か…^_^)森林組合の仕事をしているおじさんは、遠くに見かけることはあると言う。知らんぷりしたら、熊も知らんぷりするんですって(遠くなら)
  もしも熊が木から落ちてきて家を壊したら「飛来物」なので、建物保険は適用されるらしい。ただ、熊が爪でドアを引っ掻いたり(爪とぎ)、ドアを壊しても保険適用外なのですって。それって微妙……。(建物保険は、地震、雷、水害、火災、騒音など、様々なケースを保証してくれるものだが、熊という名の災害が適用されても良いのではないか???熊保険がアリなら、田畑においての猿保険・猪保険もあったらいいな^_^)
  熊も柿や栗の木にとりつきます。木登りもするけど、木ごと倒して悠々と食事したりするらしい。
  猿も熊が怖いので、熊が来るようになったらもうその木にはとりつかない。ヒトの口に入らないのは同じかもしれないないけど、熊の爪痕をみて柿の木を切ったという人を何人か知っている。

  もちろん猟友会はあります。ただ迅速に出動しないので、保全の役割はあまりない。猿の耳や尻尾を切って持っていくと換金してくれるので、そういう意味の「狩り」をしている。イノシシは食用になるので、本気の「狩り」の人もいる。イノシシの肉は少し硬い。クサイと言う人もいるけど、私はそれほどクサイとは思わない。


  山深い処で。
  高齢化のすすむ限界集落。歯が抜け落ちるようにヒトが減る。今さら街には住めない、住み慣れた処で最期まで生きたい。とてもシンプルな願いだけれど、かなり過酷な生活です。道の整備。蔦に埋もれた電柱とかバス停とかミラーとか、ありふれた光景だし。下手すると倒木で危ない状況になっている。うち捨てられた家、うち捨てられた車。庭に植えられていたアジサイ、バラ、ツツジなどの園芸品種の植物が、繁りに繁りあげていたり。うち捨てられた木のボートに、真っ青な朝顔が一面繁茂しているのも見たことがある。圧巻。
  石を積み上げて作った塀は、あっという間に苔が生え、シダが生え、サワガニが通り道をつくり、崩れていく。
  ヒトが手入れしなければ、ヒトが作ったものなど、あっという間に崩れていく。
  道が無ければヒトは通らず、ヒトが通らなければどんどんその道は細くなり、、、やがてお婆さんしか歩かなくなる。
  毛細血管のように。陽に透かしてみる葉脈のように。
  細い道は、お婆さんしか歩かなくなる。

  住み慣れた場所で暮らしたいと願う独り暮らしのお婆さん。
  家の中も、家の外も、いつもキチンと片付けている。…ただ熊よけのカネダライが(外に出る前に打ち鳴らす為に吊るしている)どうしても目立つ。
  暮らしていくって、凄いことだ。

  夜は外に出ない。それはそう。