新人営業マン、柴田君の話。
大卒入社。
うちのトップセールスマン板垣さんについて勉強していた。
県内でもそれなりの成績を残している先輩がマンツーマンで教授する。他の支所の営業マン、同期新人からも、羨望の的である。
柴田君、、、
…ちょっとおバカであった。
時間はたっぷり使う。
「お客さん、待ってるんじゃない?」とこちらが急かしたりする。普通、営業マンって速いから。すぐ行かなきゃダメなんじゃあ?
柴田君、わからないことあったら聞いてね。
ふぅむ。。。
わからないことだらけだね^_^
…そしてわりと気を遣う人なのです。
私は同時進行で事務処理を進めるので、常に進んでいる。机の上がきれいに片付くタイミングってあまりない。
柴田君は気を遣って、常に空くのを、待っている、、、。
こちらは優先順位をつけてやるから。何時に約束したの?何がいるの?ときく。
後になって「ずっと待ってたのか……」と思うのも嫌だから。
おバカだし、時間かかるし、要領悪いけど、人がいいので憎めない。
板垣さんなんかは研修期間終わったので、わりと解放している。
要領良く賢く無駄なくやる板垣さんからすれば、柴田君なんて「大丈夫か?コイツ」ほどの存在かもしれない。
営業マンたるもの、常にスマートにあらねばならない。常に相手をみて行動しなければならない。そういうことができない。板垣さんからすれば「なってない、0点」なのだ。
柴田君、それすら読めない。
普通に考えたら、板垣さんの真似をしたらいい。よく観察して、よく質問して、尊敬して信じてやったら、成績だってそれなりについてくると思う。
板垣さんは言っていた「お前の今までの経験なんか、大学で何勉強してきたのか知らんけど、ココきたら役立たんぞ。全部、歯が立たんぞ。自分らしさ、とか言うなよ。お前の経験なんかなんでもないぞ。まぁ全部捨てぇよ。全部捨てて、俺にぶつかってきてええんだぞ。必死でやってみろ」
それなら、ちょっとおバカでもできそうだ。
……と、浅はかに私なんかは思うのだが。
ジェネレーションギャップというか、体育会系でもないし、先輩に無心に突進しない。アピールというか、媚びたりもしない。
同期新人たちの中にも、辞める人や病んだ人が出始めている。
営業マンである限り、常に数字との闘いだとは思うけれど、彼はわりと淡々としている。
柴田君なりに悩み、葛藤はあるのだろうけど、なんかそれでも待っている感じがある。
頼んだことはスイスイやってくれる。素直に気持ちよく。頼まれると嬉しそうだ。
お昼休みに話をしたりすると母子家庭(?)、なんかお母さんの顔色を見ながら育ったのだろうなー、と想像できる。しかもお母さん、家にあまり居ないようだ。
お母さんの機嫌の良い時悪い時、、、
自分なんか優しくされなくてもいいのだという態度。
そのくせ邪魔してはいけないと待っている、、、。
…そんな不器用、、、。
…多少のヒネクレも無いこともないけど、「仲間第一、先輩第一」と考えているのは、伝わってくる。
へなちょこ柴田君を、「あんた、それでええんかいね!」と窓口のおばさん職員たちが手を貸す。
私だって聞くもの「もぅ大丈夫ね?」って。
今はそれでいい。
研修期間は終わって、一人前に目標を持たされているけど。それなりに前向きに、少しづつ、お願いの仕方をおぼえている。
(春と今と比べれば)一人前になってきた。
足りないところ、マイペースなところ、おバカなところは、すぐには矯正できない。そりゃそうだ。
はじめは「どうしよう新人類だ、、」と思っていたけど、「やれやれ」と思えるようになった。
でもそれは昼休みを共にした時間が長いから許せるのだろう。
反応をうかがう姿勢は変わらず、もうなんか、息子をみるようだ、、、。目線が母。
できない子ほど可愛い。
「辞めるやつもおるけど、仕事は難しいけど。俺、この支所好きなんです」
彼の免許証の写真は、今より顔がふっくらとしているが、髪は長髪ウネウネで睨んでいる。つっぱっている。
今はスッキリとした髪型、顔つき。
営業スマイルもできるようになりました^_^
板垣さんに認められるよう、頑張れよ。
褒められたいんだよね。
やっぱり淋しそうに見える。
社会人一年生。ナイーブ。
あからさまに褒めたり注意したりするのもアレなので見守っている。陰から。
他の営業マンみたいに、不必要に盛った話もしないし、損得勘定しないし、表裏ないし、そういう信頼感はある。
(板垣さん、クチはお上手だけど、賢くて便利だけど、セコイし裏がありそう、、、、私は気を許せない)
「信頼感がある」実は、何より大事だよ
傷は少なめで乗り越えてほしい。
あまり傷ついてほしくない。
(陰から見守るあきこ姉ちゃんの気持ち。巨人の星)
若いから、いろんなことができるはず
辞めるのは簡単、続けることは難しい