空気がゆるんでいる
花木もいつのまにか色をつけ、ほぼ満開。
梅か桃か、ロウバイかマンサクか、、、
通り過ぎる車の窓から、色を探して目がウロウロする。
空気に花の匂いが混ざるといけない。
大きな湯船につかったように身体がゆるんでしまう。
春はスピッツの曲が似合う。
春の花の匂いは、卒業と入学の思い出を総まとめで連れてくる。
それぞれの時代の「春」の空気を連れてくる。
過去の出会いと別れの思い出と、今はどうしているのだろうかという想像と、将来また会えるだろうかという期待で、いっぱいになる。
幼かった自分と今の自分と未来の自分と、桜の中で、梅の中で出会うような気にもなる。
でも「その春の」空気だけはすごく鮮烈なのに、肝心の細部はぼんやりとしてしまう。
夢の中のようにぼんやりとしか思い出せない。本当のようでもあるし、夢のようでもある。思い出そうとすればするほど、イメージが不安定になるようだ。
「今の春」の空気の中で、私は少し哀しくなる。
思い出せないのは君だけ 君の声の感じ 思い出したいのは君だけ
恋のはじまりに、気になる相手を無意識に目で追い、耳が追ってしまうのは
相手のことを(思い出せない)からだと思う。
まっすぐに見るのは恥ずかしいし、
憶えておきたくて、
憶えておこうとまっすぐに見ていても、その瞬間が精一杯で、どう記憶していいのか整理がつかないのだと思う。
精一杯に感覚を開いているのに、上手く記憶できないって
なんだかすごく「春」に似ているなと思う