短編小説。
画的に想像できる。とてもあり得そうな話。
あらすじ。
ブルジョワ金持ち、貴族、その妻たち、修道女、革命家、娼婦が終戦後のフランスをひとつの馬車に乗り、旅を進めていく話。
☆
自分がツライ状況にある時に、同じようにツライ状況にある人に対して優しくできるだろうか。
戦争など非常事態の時には、人は非情になる場合の方が多いような気がする。
欲張りは常よりも非情になる。
階級を重んじる人は常よりも差別する。
宗教家でも利己的な側面を発揮する。
革命家でも多数の中では正義を語らない。
弱い者を守らない。強い者がコントロールする。
多分普段の日常生活でも、耳を塞ぎたくなるような事柄は聞こえてくるし、目を背けたくなるような事柄も起きる。
耳を塞ぎ、目を背けて、自分が生き延びることに専心することは、悪い事だとは思われていない。
自分を意識づける理性よりも、遺伝子レベルの本能が、それを正当化するのだと思う。
同情したり優しくしたりしていては、自分が生存競走で不利になるから。
もう本当に鮮やかに醜い。
低俗、醜悪、非道、意地悪、強欲、、
高潔で優しい人は、歯をくいしばって泣くしかないのかもしれない。泣きながら死ぬのかもしれない。
(30歳のモーパッサンの出世作。素晴らしい)