「行人」を読んだ。

  「行人」夏目漱石岩波文庫


  …実は、インフルエンザ・タイプBで闘病中である。
  水曜午後から喉の不調があり、木曜日には別人のような声音になり、金曜日にはお客様から「インフルじゃないの?」と指摘された。土曜日に病院に行き、インフルエンザウィルスを確認。
  三連休も倒れていた、、、
  
 熱はそこまで上がらないのだけど、背中が痛いのが辛い。頭痛がヒドイ。喉がガラガラ。食欲がなくなる。吐き気&下痢。寝すぎて寝れず、退屈で死にそう。舌が白くて怖い(体調が悪いと白くなる)
  もう、真っ白なのーーーーーー!!!
  怖いーーーーーー!!!



  今日は頭痛が治まったので、夏目漱石の「行人」を読みはじめてみた。


  教科書に載っている「こころ」を読んで、「失恋ぐらいで自殺しなくてもいいのにー」という感想を持つ人がいるけど、そういうノリの人は、そもそも本を読まなくてもいいと思う。

  本を読むような人たちは、「行人」は読んでみる価値はあると思うなぁ。

  小説、かくあるべき。
  いいと思います。

  あらすじ。
  主人公の長野一郎は、学者で真面目である。妻と娘があり、父、母、弟、妹、と暮らしている。
  彼は真面目な性格なので曖昧に誤魔化したり、役目を演じたり、臨機応変に態度を変えたりできない。そして頭脳明晰な為に、家族を盲目的に信じることができない。
  神経質で頑固、偏屈者として孤立していく、、、。
  
  「死ぬか、気が違うか、そうでなければ宗教に入るか。僕の前途にはこの三つのものしかない」
 どこまでも自分の論理から抜けられない一郎は、思いつめて↑こんなことまで言ってしまう。
  
  賢いだけではこうはならない。
  自分をしっかりと持っているからこうなるんだろうな。賢くても周りと同調して自我の薄い人なら幸せになれるんだって気がします。

  そして一郎は、自分は研究者であって実践者になれないと言う。例えば幸福とはどんなものか、恋愛とはどんなものか、自分なりに懸命に考えたのだと思う。けれど、妻や家族を相手に実践できなかったのだと思う。
  哀れ…。
  
  行人というタイトルがまた…。
  なんとなく冷徹に響きます。

  …通行人とか旅行者とか、、、孤独ですよね。

  真実を探求せずにはいられない、そんな不器用で孤独な旅人たちは、この現代社会にも多く存在している気がします。
  
  そして私自身はこのラストを読んで、わりと希望的な一郎の未来を想像しました^_^
  一郎は気違いにもならないだろうし、宗教にのめり込んだりもしないだろう。

  長い手紙の締め括りが物語のラストになるのですけど、この手紙の書き手の友人Hは、愛情深い。
  どうしてこの長い手紙を書いているか。彼を心配し、彼の家族を思いやり、自分には見せるけど家族には見せないであろう一面を忠実に伝えることによって安心してもらおうという一念である。
  旅の行程、二人で討論したこと、不安定な心情の吐露、病的で特異な感情。今、どんな風なのか。
  伝えようとすることは正に誠意であって愛情なんだろうなぁ、と私には感じられる。

  最悪な体調で読んだ、重い物語でしたが、一郎を励まし応援したくなった。自分もある意味一郎だからだ。いや、皆、一郎だよな。。
  頑張れ一郎。頑張ろ一郎。一人じゃないよ。



  読んでキラキラしたり楽しくなるような小説ではないけれど。
  一郎は絶望の淵で悩み抜いてるけど。
  なかなか自分の論理から飛翔なんてできないものだけど。
  私の舌は白いけれど。
  
  ああ、幸せってなんだろう?


       
  …でもやっぱり、自分の道を捨てないことだな!