読んだ!
相変わらずの竹内熱。
プロ登山家の竹内さんが13座と14座に挑戦するあたりを重点的に書いています。
私は立派な「にわかファン」です。ごめんなさい。予め謝っておく…さて…、えっと、誰に対して?^_^
この本の書き手の塩野さんも上手です。インタビューと竹内さんの個人ブログと衛星電話での通話記録で構成されていて、臨場感があって読みやすくまとめられています。
竹内さんのインタビューだけではなく、パートナーのインタビューもあるので、それがまた非常に良いです。竹内さんってもう突き抜けちゃってて、そして強いんです。強いからこそ仲間に対して言わなきゃいけない事もあって。仲間にしかわからないその場の状況とか決断とか想いってのもあるんです。弱いからこそ仲間に対して思う事もある。体力的に極限状態ですからお互い。それが「記録」として上手にまとまっているなと思いました。両者の本音、みたいなカタチで。表向きと葛藤と、尊敬と悔しさと嫉妬と憧れと、ノンフィクションならではの「記録」ですね。
竹内さんにとって、多分、山にいる時は常に自己分析なんです。誤魔化せないんです。
体力、集中力、判断力、エネルギー量。自己の体調は常に冷静に観察するようです。
体外的な要素「こうだったらいいな(天候)」「きっとこうだったらこうしてくれる(パートナーに対して)」は、下手に期待しないんです。冷静に判断して、ブレるような時や迷う時は、あえて最悪な状況を想定する。
その分析は客観性がなければ他者を説得できないので、最終的に自分の「感知能力」に寄るとしても、なんだかすごく公正な判断のように聞こえてしまう。おつげのようなもの。多分後からいくらでも分析したり解説したりできるけど、その場ではもう身体が勝手に反応するのかもしれない。
8000メートルの世界。
つまり、2900から3000フィート。飛行機が順調に安定して飛行する世界なんですよね。
飛行機から自分が出ちゃったら、五分くらいで意識を失って十分くらいで死んじゃう環境です。8000メートルの環境に入って行ける生き物って、アネハヅルとインドガンと人間だけなんですって。アネハヅルは渡りのために上昇気流にのって、仮死状態になって、超えて行くらしいです。本来生き物が入って行けない世界です。空気は平地の三分の一。気温マイナス20度から30度。
「行きたい」「行けるかも」「できるなら一緒に行きたい」
そういう期待は持ってもいい。ただ登頂するだけならできるかもしれない。もし、登頂した後、死んでも構わないなら。
8000メートルの死と隣り合わせの世界で仲間を亡くした経験のある竹内さんは、自分に対しても他人に対しても厳しい。リラックスしている時も真剣な時も、外面も内向きも、天気や自然環境も、全部ひっくるめて本当に行けるかどうか想像している。
そしてやっぱり生きて帰ってこなきゃいけないんだ。
チョー・オユー サミットプッシュ
途中で竹内さんに「君はここまで。(僕が)帰ってくるのをキャンプで待っていてくれ」と言われた場面、壮絶すぎる。もしも私だったらと想像すると、情けなくて死にたくなるんじゃないか。けれどチャレンジした気合いとか悔しさとか恥ずかしさとか、その後の生き方に間違いなく影響するだろう。
例えばイモトとか三浦さんとかシェルパひきつれてヘリ使って酸素使ってより安全に登山する企画もある。それなりのチャレンジだと思うし、ケガされたり死んでもらっては困る。まぁそれは登山というより(企画)です。サポートする人が多ければ多いほど、なんで山に登るのかという基本がボヤけてしまう。自分が登りたいから登るんですよ。文句言いながら登るくらいなら登るのを辞めたらいい。本当に。
いやー、
人間に生まれたんだから頑張らなきゃダメだな。なんにしても。
情けなくて死にたくなるまで頑張らなきゃダメ。
怖いくらいに綺麗な景色の中で。
見たことのない世界で。