じめじめとした日々

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 雨が降る休日は、出かけるのが億劫で家にいることが多い。

 

 先週、何の前触れもなく現れた大きなGのせいで私の部屋は安全ではなくなった。

  1年半以上住んだ部屋だったが、小さなGももちろん、一階なのに蚊も現れない優秀な部屋だったのに。

 

 やつは多分二階からやってきた。

 普段物音をたてない二階の人が騒がしくしていた後に現れたからだ。戦いの音だったのだ。静かな夜に、自動で点灯する洗面室の白い壁に、ピタッとはりついていた。私と目が合っても逃げない。私も突然の出来事に現実を受け入れられず、しばらく固まった。そして動けなくなった。私が動いたらどうなる?向こうも動き出す?想像してさらに緊張する。

 登山中に熊に突然出くわしたらこんな感じなのだろうか。相手だって戦いたいわけではなく、びっくりして攻撃してくるのだ。平和的に自分のテリトリーに戻ってくれたらいい、お互いのために。二階での格闘でヒトがどれだけ凶暴かわかっているはずだ…一旦は平静を装って私はドアをそっと閉めた。

 …再びドアを開けたら、まだやつはそこにいた。一体どうして。どこから来てどこに行きたいのか。二階より「いい場所を見つけた」と思われてしまったのか。

 いけない。舐められた。弱いやつだと思われた。戦わなきゃ。何の武器もなかった。スプレーもハエ叩きも。箱ティシュかスリッパか。無理だ。感触が怖い。私はチラシを丸めることしかできなかった。殺傷確率は格段に低いのではないか。芸人のツッコミ程度にしかならないのではないか。無駄かもしれない。いや、無謀なだけかもしれない。でもそれしか私にはできない。

 寝室とリビングのドアを閉めた。廊下と玄関まで、洗面室でケリをつけよう。私は共存はしない、絶対に。

 やつは壁から床へ移動した。飛ぶ確率は減ったろう。戦わなきゃ。頼れるのは自分だけ。私は一息に終わらせるべく、叩いた

 

 動いた

 私は悲鳴をあげながらも叩いた

 

 しかし負けた。気持ちで負けた。

 

 怖かった

 

 リビングのドアの下からリビングへ行ってしまった

 再びドアを開けた時、もうどこに行ったかわからなくなってしまった。叩いたのに。あんなにがんばって叩いたのに。

 

 寝室は引き戸になっているので、下からは入っては来られない。

 …壁づたいになら入って来られるかもしれない…でも一体なんのために?なんでそんな事を?

 そんな事は無いに決まっている。

 

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 次の日は友達の家に泊めてもらった

 

 スプレーとコンバットを買って帰った。コンバットの箱には「その日のうちから効く」と書いてあった。文明のリキ。頼もしい。チラシを丸めたモノで勝てる訳はない。文明のリキに頼ろう。

 

 その日も

 その次の日も気配はなかった。

 と、思いきや。現れた。その次の日に現れた。やはり夜。やつは夜行性なのだ。戦わなきゃ。戦え、私。スプレーをかけた。前よりも速いスピードで逃げた。戦え、私。怯えて生活するのはもう嫌だ。動かなくなるまでスプレーをかけた。台所の何かのアラームが鳴った。煙の警報かな。アルソックが来ちゃったらどうしよう。大丈夫だった。しばらく時間を置いて動かないことを確認してからティシュで見えないようにしてチリトリとホウキで植え込みまで行って捨ててきた。

 疲れた

 

 4連休は雨。

 部屋の拭き掃除をした。

 

 こうしてやっと平常に戻りつつある。

 

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