鎌倉のソメイヨシノは、介護が必要なおじいちゃんみたいだった。道の邪魔になってしまうからだろう、太い枝でも根元から切られ、病気にならないよう薬が塗られていた。不自然に曲がって、日があたる方に必死に枝を伸ばしていた。日当たりが悪いのだ。ゴツゴツした木肌がさらに不健康な感じにしていた。倒れないように添え木がしてあった。全体的に、老木も多かったのだろう。
山口県のソメイヨシノは若々しく、健康的だ。土も肥沃。とてものびのびと枝を伸ばしている。雲が浮かんでいるように、枝に花をつけている。日本画にあるような桜だ。好きな花ではなかったのだが、こんなに美しいものかと本当に驚いた。好きになってしまった。
都会で育った者は、本来のソメイヨシノをみて驚く。
田舎で育った者は、都会のソメイヨシノをみて驚く。と思う。