松林桂月展をみてきた。

  近代日本画。

  山口県立美術館にて。没後50年。


  ポスターは「春宵花影」東京国立近代美術館蔵。精緻で幻想的な桜と月の、水墨画。質感といい、緊張感といい、凄いバランスなのです。

  近代的過ぎて、デザインのようでもある。アニメーションというか、イラストのようだ。

  ……、まぁ、どれどれ。と、みに行くことにした。


  動物は下手くそだと思います^_^

  カメラがまだないのでしょうね。動物イマイチ。


  この人は松とか竹とか岩とか山が良い。南宋画はいいなぁ、と思います。中国風の、遠くの山、近景の松、雲と霞、釣り舟、小屋。緻密なくせにダイナミックにまとまっている。

  湖と空は薄い墨で塗り、山と近景は白抜きしている画があった。普通、山は黒、カラーの日本画なら青か緑。これってネガポジが逆なんだけれど、妙に説得力があって、夢のようだけれど、本物っぽかった。霞漂う、雄大な中国の白い山山が神々しい。こちらまでゆったりとした空気が伝わってくるようでした。


  画面いっぱいに黒い松を描いてるものは、本当に緻密。緻密なんだけど、遠くの枝はボヤかして描いていて息苦しくない。何もかも緻密だと緊張する。力加減が絶妙だ。風が通り抜ける様を、スローモーションでとらえました!という出来栄え。部屋に飾るなら、こういうのがいい。


  画面いっぱいの竹の画も良い。


  黒い線で縁取りをしているのが結構ある。「影」を表す黒ならば気にならないけれど、「線」の黒は私には強すぎる。近代美術の影響でしょうか。新しい技法に思えたのかもしれないけど…。せっかくの空気感を人口的なデザインにしてしまっている。写実の腕があるから、かえって勿体無いような気がしてしまう。


  ポスターにあった「春宵花影」は、素晴らしかった。

  ぼんやりとした春の夜の空気感、すごく出てます。外国人も感激するような見事な桜ではないでしょうか。よく昇華できたなぁ、と思う。画家がとらえた幻想幽玄の美しさを、技術で体現した。ピントは夢に定めている。


  晩年の作品がまた、わかりにくくて良い。画面いっぱいの杉林。黒の山山。迫力です。まちがいなくアバンギャルド。日本の自然が画面いっぱい。

  絶筆の作品は、土手とみどり。なんでもない風景画だ。なんでも無さすぎる、構図もなにもない。スケッチといっても、もうちょっとなんかあるだろう、という画だ。

  ありのままを描こうとする写実の心意気と、感動をとらえようとする冒険心と、空気をとらえる風をとらえる技術と能力が、彼なのだろう。


  全体として、長く鑑賞できるのは三割くらいだったけれど、それだけ試行錯誤したのだと思う。

  そういった試行錯誤をふまえ、彼の人生をみるようで、なかなかでした。