猫のいる部屋。

  茶色の猫の話。
  昨日の夜、退院して、家から送ることにした。
  延命治療はしません。

  お腹を開けて2cm大のしこりを(取れたら)取る為の手術だったけれど、それはリンパ節がしこりになったもので神経やら血管やらと繋がっており、取ることはできなかった。腺癌の末期状態であった。小腸も二箇所、閉塞状態とのこと。吐き気はあるだろうけど、本人が欲したら、水分は吸収できるのであげてくださいとのこと。オシッコはできるけど、ウンチは多分できないでしょう、と言われた。
  縫合跡が痛々しいけれど、包帯はしていない。化膿止めを塗ってもらった。猫が自分で舐めても良い薬らしい。近頃は、そういう薬があるのか、と頭の遠くの方でボンヤリとインプットした。
  余命は一週間から10日
  猫を最期まで看取ったことがないので、ガーゼで鼻を湿らすのだろうか、オシメがいるのか、食べ物は与えてよいのか、乾燥カリカリだと食べにくいだろうからペースト状のものが良いのだろうか、先生にいろいろと聞いてみた。
  爪を切ってもらった。

  ペースト状の食べ物は、プラスチックの注射器のような注入器で、猫の口を開けさせて横から注入する。猫は注入器を噛みまくる。見た感じ、無理矢理に流し込むように見えるので、あまりやりたい作業ではない。吐き気もあるのだろうし。腸も詰まっているし。先生が「持って帰ってください」とくれたのは、チューブ一本と注入器二本だった。それはそれで、残された時間の短さを感じて、頭がボンヤリとした。先生は、ハッとして慌てて、追加で注入器を七本くらい出してきた。
  今までお世話になった病院スタッフの方にお礼を言いたかったけれど、窓口のお姉さんが黙って頭を下げただけだ。「いろいろとありがとうございました」
  先生はじめ、スタッフの方も、救えない命に対して無念であり悲しいのであろう。私のように、ポロポロと泣いてしまう飼い主に、かける言葉が無いのだろう。それはそうだ、頭の遠くでボンヤリと思う。

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  昨日は黙って眠るばかりだった猫は、今朝は喉をゴロゴロと鳴らし気分が良さそうだ。
  話しかけたら「なー」と答える。
  呼びかけたらシッポを振る。

  条件反射かもしれないけど

  私は嬉しい

  

  一昨日の晩は、猫のいない部屋で昔の写真を見ていた。

  今日は猫のいる部屋で、猫の重みや暖かさや気配を感じることができる。

  最期まで看取ることができて幸せだと思う。
  今までいた猫は、10年目に姿を消した。
  死期を迎え、体調の異変を感じた猫は「得体の知れないモノに攻撃されている」と感じ、姿を消すという。
  居なくなってしまったら、墓を作れない。

  そっと静かに、不安があっても淋しくないように、送ることができたらいいなと思う。
  私は無闇にこの猫を愛している
  少しでもいいから、心細さを取り除いてあげたい


  これは昔の写真
  美しい猫
  名前は「ビー」
  
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