シーチキンのチカラ。

  「よくさぁ、別れたダンナのところに置いてきた息子に会いに行って、いつもいつもお前のことを心配しているよ考えているよって言うツマがいるけどさぁ…、アレって絶対ナイよね。自分が楽しくて仕方ない時なんか、置いてきた息子のことなんか考えてないよね。自分が寂しくって仕方ない人なら、することもなくて、置いてきた息子のことをずっと考えたり、思いつめたりするんだろうけどさぁー。普通は寂しい時とか不安な時しか家族のことなんか考えないよねー。
  逆に息子もそうだろうし。そんで親だってそうだろうよ?
  自分が楽しい時は何も考えてないって!だれでも!」
  と、隣の席の松田さんが高らかに言った。

  あはは、と皆笑った。

  家族は自分が辛い時にふと思いだされるもの、、、、松田さんが言うからなんとなくシャンとわかる。人生サバイバル!うじうじメソメソしてんじゃないよ!と背中が語った。
  多分「ふん!」っ言ってたと思う。

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  余命が尽きているはずの猫は、今日も喉を鳴らしてスヤスヤと眠っている。

  (最期だし、、、吐いてもお腹が痛くても、美味しいと幸せを感じてほしい)と与えたシーチキン缶であるが、、、
  何度も何度もねだられて、舐めるほどの少量づつだけど、与え続けている。
  ねだるタイミングは、玄関の扉の音。ヒトが帰ってきたらもらえると憶えた。
  ねだる時は冷蔵庫の前でお座り。目でヒトに訴える。
  それで気合いを入れて鳴く。

  ヨタヨタとした足取りだけど、生活にメリハリがついたのか、シーチキン前より元気だ。

  爪研ぎしてるし
  (病院で切ってもらってるのに、、、、第一、ファイティングポーズを崩さないボクサーのようだ)

  果敢だなー

  
  でも大人しく穏やかに死ぬよりも
  意地汚くウロウロして、爪研ぎして、ゴロゴロいってる猫の方が、茶色の猫らしい
  バカでも無茶でも、高い所まで飛べたね

  引き出しに無理矢理入るよね
  扉だって、自分で開けるものね

  バカでも可愛いものね^_^

  
  

シーチキンの魔法。

  余命宣告された茶色の猫の話。
  先週手術して、余命一週間から10日と宣告され、今日がその一週間め。
  「今日死んでもおかしくない」

  「今日死ぬかもしれない」             だけど

    …あんまり死にそうじゃない

  …突然、パタリと倒れるのだろうか


  
  押し入れめがけて飛んだ。それで、落ちた。それで、恥ずかしそうに出ていった…。

  飛ぼうと思うのも果敢だし、、、飛ばないよ?普通。

  前の記事で「食べてない」と書いたのだけど、そのあとシーチキン缶を食べたのですよね…美味しそうにペロペロと食べた。…吐くかなぁ、と心配したけど吐かない。ハクハクと、舌なめずりして、幸せそうに。
  明日死んでも構わないよね、幸せだから
  長らえることは重大ではない

  それで爪研ぎしている
  (動物病院で爪切りしてもらってるのに)
  
  外にも出る

 後ろ脚の体温は低い気がするけど。
  私は妖怪猫吸い。存分に猫を吸う。http://sprighascome.hatenablog.com/entry/2014/02/04/204756


  どうか行かないで

  

  般若の顔で
  世界で私と二人きりだった
  
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ホタル巡礼。


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  ジャガイモの花。

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  通りがかった荒れた庭に、美しく咲いたアジサイ

  
  茶色の猫は、余命宣告されて退院してから食事をしていない。
  しばらくの間は、手術する際の点滴で栄養は足りていたのだろうけど。
  水は自分から飲むし、オシッコもする。だけど食べない。6日食べていないことになる。動物病院でチューブ入りのエサをもらったのだけれど、無理矢理に流し込むように注入器で与えるので、やらない。エサ鉢にそれを少し入れて、舐めればいいな、と思い置いている。
  痩せて小さくなったけれど、大人しく穏やかな顔をしているので、それでいいと思っている。

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  ごろ〜ん。今日の夕方。

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  のび〜。今さっき。

  ボロボロだけど、自分なりに毛づくろいしている。痛そうでも苦しそうでもないから、私は助かる。痛そうにされたり苦しそうにされたら、辛いもの。

  鳴くことが少なくなった。シッポはまだぴんぴんとよく動かす。触った感じが、少し体温が低い気がする。そりゃそうだよね、食べてないもの。燃焼するものが無いもの。
  
  ゆっくりと、眠るように、機能を停止していくのかな。
  少しづつ、瞼が落ちるように。


  ☆

  土曜日に、人形浄瑠璃の講演の手伝いをした。
  田舎の伝統芸能だ。
  以前は小学校の授業でやるほど流行っていたものが、廃れてしまっていた。2年程前に、今いちど復活させようとグループができて、人形の修理もした。三味線と詠いも生演奏でやる、わりと本格的なグループだ。リーダーはいとうさん。私はいとうさんが詠うのを初めて聴いた。
  
  (歌舞伎や浄瑠璃は娯楽なのかもしれないけれど)浪々と詠う声は、どこか神聖であった。
  心中したり仇を討ったり、そういう内容なのだけど。人間の声は正直だなと思った。悲しみや願いがストレートに出る。
  上手い・下手の問題ではなく、いとうさんの正直さが滲み出るようで切なかった。
  触れてはいけないのでは、と思う程に張り詰めていた。

  その人の気持ちなんてものは、他人にわかる訳もない。

  「傷み」や「喪失」や「迷い」や「後悔」の経験が無い人は、その経験に、同情することさえできない。想像もできないだろうと思う。

  いとうさんの「傷み」や「喪失」や「迷い」や「後悔」が、セリフに混じっているような気がした。人には言えないような心の内を、少なからず見せている。

  「声」に惹かれるのはつまり、そういうことなのかもしれない。

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  毎晩のように、ホタルをみに行く^_^

  昨日は月明かりがものすごくて、川にも月が映っていた。実際の月と、川に映る月と、両方から照らされた。明る〜い。
  月明かりに浮かぶ私の影は、非日常的で少し怖い。
  遠くでボチャンと大きな水音がする……もしや、河童⁈
  カエルやら鳥やらの大音量に混じり、「えーっと、蝉⁈」「うーん、鈴虫⁈」と思われるモノも混じり、夏だか秋だかわからない。
  田んぼにカエルが飛び込むと、波紋の影が広がる。
  ホタルだけが、とても静かに飛んでいる。
  
  今日は曇りだったので、闇夜のホタルだった。闇夜のホタルは宇宙っぽい。
  
  星が燃えるような、命が燃えるような、柔らかいホタルの光。


  命って、ホント、奇跡なんだな
  という今の   こころもち

  

窓からの眺め。

  窓辺で猫が外をみる
  少し網戸にして、風を入れたり、音を聴いたりする。
  う〜む。本当に賑やか!昼間は鳥が、夜にはカエルが賑やかだ。
  時々、車は通るけど、横浜に住んでた頃のような密度ではない。工事でうるさいことはない。窓と窓が隣接して、隣人の生活が垣間見えることもない。
  
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  木陰に入れば涼しくて。
  蝶々がヒラヒラと飛んでいるのを見ると、アクセクするのが馬鹿らしくなる。
  忙しく飛び回るツバメたちも、遊んでいる訳ではなく生きる為に働いているのだけど。
  つい都会の密度やスピードを忘れてしまう。
  この辺りの人は「ここには何もない」と言う。
  うーん、自然の存在感はたっぷりとあるけどなぁ…

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  次々と庭の花は入れ替わる。
  蕾が膨らみ、虫を呼ぶ。

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  今日は玉ねぎを収穫した。

  この庭なら。茶色の猫も淋しくないだろう。

  気持ちよい風が通り、花や野菜が育ち、たまには灰色の猫や牛夫くんが遊びに来て、虫や鳥も賑やかだ。
  最高なんじゃないかと思う。
  
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  アジサイの間に埋めようと決めた。
  ここなら淋しくないだろう^_^

  余命宣告を受けてから4日(5日?)
  痩せて小さくなったけれど、撫でてやるとゴロゴロと喉を鳴らす。シッポで返事もする。鳴く。歩く。トイレも自分でできる。


  私は出かける時には必ず「いってきます」と猫をなで、帰ってきたら必ず「帰ってきたよ」と猫の顔を見る。
  
  「いってきます」と「ただいま」という言葉の本来の使い方を、初めて知ったような気がした

  
  穏やかな日々
  こんな日々が続けばよいと思う


優しい夜。

  茶色の猫が、夜の散歩に出たがったので、扉を開けた。
  風のない湿った夜

  午後8時半。

  家の前の溝で、水を飲んだ。
  田んぼの肥料やら農薬やら混じってるかもしれないけど、小魚いるしね、ずっと飲んでたし。まぁ、いいか。
  ウロウロとしたり、ジッとうずくまったり。
  テリトリーの見回りをしているのかなぁ…。

  蛍が、2、3匹、飛んだ
  あぁ、そうだ。
  蛍の時期だ。

  
  ☆

  懐中電灯を持って、あぜ道を通り、川に向かった。
  日中、雨が降ったり止んだりしていたけど、夜は曇りになり霧が出ていた。
  水滴がキラキラと光って、一瞬、蛍かなと迷う。草のいたるところに、水滴。これはこれで幻想的。水滴って美しい。
  大音量のカエルたち。虫たち。鳥も鳴いてる。闇なのに、騒々しいほど賑やかだ。懐中電灯を当てても、ちっとも逃げないカエルたち。可愛いなぁ。
  水をはった田んぼに、月明かりで黒い山が映る。夜の空が映る。これはカメラのレンズには収まらない色。動物の眼の、高性能さを感じる。
  甘い匂いがする。それは草の匂い、命の匂い、夜の匂い。この匂いは豊か。人工的に再現はできないけれど、太古からずっと繰り返してきた自然の匂い。死んで朽ちて生まれて恋をする匂い、母の匂い、汗の匂い、雨の匂い。
  

  川の橋から蛍を眺める

  あんなに親しげだったカエルの声が遠くなり、空間をゆっくりと舞う蛍は、静かだった

  感情過敏になっている私には、夜の親しさや美しさや広大さが慰めとなる。

  風のない夜

  偏っている自分が、とんとんとならされた。
  あぁ、広い

  


  猫からも、甘い匂いが漂ってくる



  

猫のいる部屋。

  茶色の猫の話。
  昨日の夜、退院して、家から送ることにした。
  延命治療はしません。

  お腹を開けて2cm大のしこりを(取れたら)取る為の手術だったけれど、それはリンパ節がしこりになったもので神経やら血管やらと繋がっており、取ることはできなかった。腺癌の末期状態であった。小腸も二箇所、閉塞状態とのこと。吐き気はあるだろうけど、本人が欲したら、水分は吸収できるのであげてくださいとのこと。オシッコはできるけど、ウンチは多分できないでしょう、と言われた。
  縫合跡が痛々しいけれど、包帯はしていない。化膿止めを塗ってもらった。猫が自分で舐めても良い薬らしい。近頃は、そういう薬があるのか、と頭の遠くの方でボンヤリとインプットした。
  余命は一週間から10日
  猫を最期まで看取ったことがないので、ガーゼで鼻を湿らすのだろうか、オシメがいるのか、食べ物は与えてよいのか、乾燥カリカリだと食べにくいだろうからペースト状のものが良いのだろうか、先生にいろいろと聞いてみた。
  爪を切ってもらった。

  ペースト状の食べ物は、プラスチックの注射器のような注入器で、猫の口を開けさせて横から注入する。猫は注入器を噛みまくる。見た感じ、無理矢理に流し込むように見えるので、あまりやりたい作業ではない。吐き気もあるのだろうし。腸も詰まっているし。先生が「持って帰ってください」とくれたのは、チューブ一本と注入器二本だった。それはそれで、残された時間の短さを感じて、頭がボンヤリとした。先生は、ハッとして慌てて、追加で注入器を七本くらい出してきた。
  今までお世話になった病院スタッフの方にお礼を言いたかったけれど、窓口のお姉さんが黙って頭を下げただけだ。「いろいろとありがとうございました」
  先生はじめ、スタッフの方も、救えない命に対して無念であり悲しいのであろう。私のように、ポロポロと泣いてしまう飼い主に、かける言葉が無いのだろう。それはそうだ、頭の遠くでボンヤリと思う。

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  昨日は黙って眠るばかりだった猫は、今朝は喉をゴロゴロと鳴らし気分が良さそうだ。
  話しかけたら「なー」と答える。
  呼びかけたらシッポを振る。

  条件反射かもしれないけど

  私は嬉しい

  

  一昨日の晩は、猫のいない部屋で昔の写真を見ていた。

  今日は猫のいる部屋で、猫の重みや暖かさや気配を感じることができる。

  最期まで看取ることができて幸せだと思う。
  今までいた猫は、10年目に姿を消した。
  死期を迎え、体調の異変を感じた猫は「得体の知れないモノに攻撃されている」と感じ、姿を消すという。
  居なくなってしまったら、墓を作れない。

  そっと静かに、不安があっても淋しくないように、送ることができたらいいなと思う。
  私は無闇にこの猫を愛している
  少しでもいいから、心細さを取り除いてあげたい


  これは昔の写真
  美しい猫
  名前は「ビー」
  
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私の宝物。

   

 
  


  私は甘っちょろい人間なので、最悪の事態を想定しない、というか、想定できない。

  「まさかそんなことは…」と思いながら、そんな事態に陥るのです。

  楽観的といえばそれまでだし、おめでたい人生、…挫折、失敗、後悔、多々あります。

  いやいや、そんな泣き言なんですけど、やはりぽたぽたと涙が止まりません。

  茶色の猫は、ガンでした。
  ここ10日ばかり、急に元気がなくなって心配はしていたけれど、動物病院の医者に言われても「まさか」と思っているのです。

  2センチ大のしこりがあって、腹水がたまっている。腹水を検査したらガン組織が混じっていて、ほぼ間違いなくそのしこりは悪性腫瘍。転移している可能性も大きいし、摘出できない箇所かもしれないということ。
  痛みはなさそうなので救いですけど。

  この茶色の猫に、今まで私はどれだけ救われたかわかりません。

  だんだんと説明をききながら実感がわいてきた。ぽたぽたと涙がこぼれ止まらず、しまいには鼻水も出るし、しゃくりあげるし、看護婦さんもたまらずもらい泣きしてるし、恥ずかしいのですけど、ぐったりとした猫をなでながら、ホント、自分は甘っちょろいなぁーと思うのであります。

  帰り道、暗い道を運転しながらぽたぽたと泣き、しゃくりあげ、鼻水をすすり、…こんなに優しくこの猫をなでたことがあったかと思うのです。
  実際、私はグイグイとなでていた。
  反抗的で凶暴な猫であった。爪をたてて扉も開けるし、食べ物は泥棒猫らしく奪っていくし 、飼い主にも威嚇する鼻息荒い猫であった。それでも私たちは仲良しで、いつも一緒に寝ていたけど。
  自分が辛い時には勝手に抱いた。
  随分と慰められた。

  めっきり大人しくよい子になった茶色の猫、…それらしくなくてひどく悲しい。
  般若のごとく怒り狂ってほしい。
  なでる手に爪をたててほしい。

  
  せめて死ぬ時、        その時には、
  (まだ死なないけど)
  優しくなでてやりたい
  今までありがとうって
  

  目ヤニで汚れていても、鼻くそがついていても、息が臭くても、ハゲていても、ボサボサの毛並みでも
  あなたは私の宝物

  足音をいつもきいていた
  あたたかった

  受け入れがたく、変わりゆくもの

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